暮らしの風景

Vol.8

最高の毎日を我が家で

目の前に緑豊かな公園を望むI様邸は、2階リビングから見る窓一面に広がる景色が一番のご馳走です。夏のある日、敷地面積約25坪の狭小敷地に実現させたI様お気に入りのお住まいに、その暮らしぶりを拝見しに伺いました。


諦めかけた小さな土地

大きな公園がいくつかあり、生活の利便性も高いことから、住宅地として人気の地域にあるI様邸。お近くのマンションに住んでいた時から、この街での土地探しをしていましたが、なかなか希望に合う土地は見つからず、家づくりを考え始めて3年近くが過ぎた頃、この約25坪の狭小敷地に出会いました。希望面積より小さいものの、目の前に緑地が広がる敷地環境と予算面も申し分なかったため購入。家づくりのパートナーを探して数社にプランを依頼しましたが、住むイメージができるものはなかったと言います。
『この小さすぎる土地には、希望の家を立てられないのかもしれない』と諦めかけた頃、ナルセノイエに出会います。土地を見せて相談すると、「大丈夫、希望の家建てられますよ!」と背中を押され、依頼したファーストプランは”住みたい”と思える家でした。

I様邸の外観   ※青い車はスタッフのもの

I様のお住まいは切妻屋根の3階建て。敷地の高低差から高基礎であることも手伝って背が高くなりがちですが、建物全体の高さを抑えて圧迫感を軽減することを意識しています。
 
ご夫婦が家づくりで参考にされていた本の中に、建築家 吉田桂二さんに師事した 岸未希亜さんの著書『最高にわかりやすい住宅の間取り教室』があります。

この本を読み、「シンプルな切妻屋根で、できるだけ高さを抑えた、街に対して主張せず馴染むような佇まいがいい」と思うようになったそう。

また都会的な建物より和モダンな家で、工業製品よりは自然素材を多用して、自然環境と調和するような暮らしを望んでおられたI様にとって、ナルセノイエのモデルハウスがイメージにぴったりだったことからも、ファーストプランに期待できたと言います。

岸未希亜 著「最高にわかりやすい住宅の間取り教室」から、I様の好みの佇まいを教えてくださいました。

そうして完成したI様邸は、
ご主人が「家に帰ってくるたびに『いい家だなぁ』と思う」と話すほど、お気に入りの住まいになりました。

 
小さくて懐の深い家
 

1Fにグランドピアノのあるフリースペースや水回り、和室があり、2Fに家族団欒の中心であるLDK、そして3Fロフトスペースに寝室がある間取り。

この敷地最大の魅力である南側の緑地を望む2Fリビングには、シンプルな家具や家電。家族が日常的に集い、食事をしたり、本を読んだり、ゲームをしたり、家族で話をしながらくつろいだりと、様々な過ごし方があるからこそ、大きな家具は置かず、コンパクトな空間でフレキシブルに対応できる懐の深さが特徴的。

1Fから3Fを繋ぐ階段は軽やかなスリット階段で、光と風を行き渡らせながら、暗くなりがちな場所を明るく保ち、室内を広く見せています。この階段は、移動だけでなく、時に腰掛ける場所になったり、階段板にハンガーをかけて洗濯物を乾かす場所としても使用しているのだとか。

3Fからリビングを見る。ここはリビングとダイニングの役割があり、家での多くの時間を過ごします。

自発的に生まれる回遊動線

エアコンは基本的に2Fリビングにある1台を稼働させ、サーキュレーターで空気を攪拌している。スリット階段と吹き抜けで、空気の温度がほぼ均一になり、2Fリビングはもちろんのこと、3Fにある寝室も夏冬共にエアコンなしで快適に過ごせるという。
 

1Fは、主に趣味スペースとして活躍中。音楽教師である奥様と娘さんがピアノを奏でたり、昆虫採集が好きな息子さんが虫たちと戯れたり、外から帰ってきた時の荷物の仮置き場になっていたり。
 
「緑地が近いので、暖かくなると虫が入ってきやすくなりますが、1Fがバッファーになってくれるので、2FのLDKにはあまり入ってこなくて助かります。息子が飼っている虫も1Fで管理していて、彼も気兼ねなく虫との時間を過ごせているようです」
 
生活のゾーン分けが自然とできているご様子です。

ピアノを弾く奥様と娘さん。横の箱型階段の下にはお手洗いを設けています。

家族それぞれの趣味を楽しむ、1F玄関土間横のフリースペース。

 

目的別のお部屋を細かく設けることはやめ、ひとつの空間で多様な使い道ができるI様邸ですが、様々な居場所が用意されているので、雑多にはならず、時と場合に応じて住みこなしていらっしゃるのが印象的。
 
そして建物を出るとアプローチ横にウッドデッキがあり、こちらも時にリビングの代わりになります。
 
「気候のよい時には、このウッドデッキにアウトドアチェアを出してのんびりしたり、家族で食事をしたりもします。コンビニで買ってきたご飯でも、ここで食べると気分が全然違う」と笑います。

アプローチには植栽をし、外との緩衝材に。水やりは子供達が積極的にしてくれるそうで、その際の植物観察も子供達の楽しみになっています。アウトドアリビングとして活躍するウッドデッキは、外で遊んだり、買い物から帰ってきた際の荷物の仮置き場としても便利。

 

 
最高の休日を我が家で
 

「以前は毎週末、高速道路を使うような遠出をしていましたが、今は子供達も含めこの家で過ごすことが好きで、遠出をしなくなりました。

休みの日は、午後早めにスーパーに行き、食材を買い込みます。それでつまみを作って、お風呂に入って、4時半くらいにビールを開けて、暮れゆく空や街をリビングの窓から眺めながら、ゆっくりと食事をする。それがすごく幸せです。」


「旅館のようなリラックスできる家がいいと思っていたので、障子や木の床も相まって、そのような気持ちになるのは本当に満足度が高い!」

公園の緑を眺めるリビングの窓にカーテンはなく、日中は障子を開けて過ごしています。前面道路は比較的交通量の多い抜け道ですが、その向こうが公園であることや、2Fリビングであること、窓の高さからも人目は気になりません。

「ここからの眺めが、本当に最高なんですよ」

そう笑顔で語るご夫婦。忙しい日々の中で、住まいが疲れを癒し、明日への活力になっているのは嬉しい限りです。

休日の食事の支度はご主人の担当。リビングのローテーブルをキッチン近くに移動させ、外を眺めながら食事をするのだそう。
 

 
いつ見ても“好き”と思える家
 

「2Fリビングの障子は、夜に閉めます。そうすると部屋のあかりが柔らかく外に漏れて、仕事から帰ってくると暖かな気持ちになります」と笑顔のご主人。
 
お話を聞くほど、『この家が大好き!』という想いがご家族から存分に伝わってくるのですが、それは最高の休日だけではなく、日々感じる心地よさも起因しているようです。
 
「施主の好きなもの、譲れないものを理解いただいた上での素材選びや空間づくりが本当に上手だと思います。予算が多くかけられなかったのですが、水廻り以外の壁は漆喰です。そこはナルセさんが譲りませんでした(笑)。住んでみるとその良さがわかりました。漆喰の空間は空気が澄んでいて、カラッとしていて気持ちいい。家が小さくて壁が近いので、そこを妥協しなくてよかったです」
 
その他、素材を変えずにつくりの工夫で価格を調整した木製建具や、木目や節の表情を見ながら現場の大工が組み合わせている桧の床もお気に入り。
 
「肌に触れているところが気持ち良いと嬉しいですね。子供たちは冬でも裸足で駆け回っています。傷や汚れも全く気になりません」と笑います。

左上:お子様が書いてくださった案内メッセージ 右上:道ゆく車や人が見えづらい高さの腰窓
左下:手触りの良い杉の手摺り 右下:裸足が気持ち良い、さらりとした無塗装の床

 

建築面積が10坪以下とは思えないほど、広くゆったりと、そして余すことなく住みこなしているI様。

何より、ご家族皆様がこの住まいでの時間を存分に味わい、おおらかに楽しんでくださっていることが微笑ましく、嬉しく感じました。

I様、暮らしを見せていただき、ありがとうございました。

(⽂・写真:松尾 絵美⼦)

   I様邸


         
   建築年   2021年
   取材年   2024年(取材時築3年経過)
   所在地   愛知県岡崎市若松町
   敷地面積  25.86坪(85.50㎡)
   延床面積  26.55坪(87.63㎡)
   住まい構成 ご夫婦+お子様2人(取材時)