トップページ | アクション100 | 008 緑と雑貨と器のお店 「日々(nichi nichi)」

アクション100case.008

 

緑と雑貨と器のお店
日々(nichi nichi)

アクション100 case.008は、安城駅北口のロータリーにある雑貨屋「日々(nichi nichi)」さんをご紹介します。


そこは、祖母が営んでいた駅前の売店

JR安城駅の北口のロータリー角に佇む、昭和感溢れるレトロな建物。今回ご紹介する日々さんは、この建物の白く塗られた一階部分にある雑貨店です。

どのような方が営まれているのだろう、とわくわくしながら、シャビーな風合いの引き戸を開けると、優しく「こんにちは」と声をかけてくれたのは、店主である杉浦さやかさん(以下、さやかさん)でした。

帆布かばん

大人が5人入ればいっぱいになってしまう小さな店内は、器やインテリア小物、アクセサリーや服飾雑貨、文房具などが、古道具や什器に並べられ、少し暗がりの明るさがとても落ち着く雰囲気。

この場所は、さやかさんのおじい様おばあ様の住まいであり、売店を営んでいた場所。伊勢湾台風の時に木造の建物が全壊してしまったためコンクリートブロック造で建て直したもので、築65年になります。

さやかさんのおじい様おばあ様は、この場所で子育てをしながら、二十数年前まで売店を営んでいたそうで、さやかさんは幼少期にここへ遊びに来てアイスを食べたりした思い出があるのだとか。

おばあ様がお店をやめてからは、この場所は倉庫になっていて、「もったいないなぁ」とさやかさんは常々思っていたそうで、雑貨店を始めようと思った際に、おじい様おばあ様にこの場所を使わせて欲しいとお願いしてスタートしたのが「日々」です。

今でも店舗の奥の住居にはおばあ様やご家族が住んでおられて、店舗部分は玄関の役割もしているので、時折顔を出されることもあります。

帆布かばん

昭和30年代に建てられた建物。白く塗られた部分が日々で、その奥や二階は住居となっている。

帆布かばんたち

青い引き戸は、さやかさんがシャビーな雰囲気に塗装したもの。控えめな看板や照明などが味わい深く、ヨーロッパの古い雑貨店のよう。

帆布かばんたち

店内の様子。天井はラワン合板、裸電球や配線もあらわしにして、懐かしく親しみやすい空間に仕上がっている。雑貨が置かれている棚や古道具とも相性◎。

帆布かばんたち

おばあ様の売店時代に什器として使われていたもの。昭和のフォントも良い味を出している。

店の内装はさやかさんのDIYによるものや、昭和2年に建てられたというご実家に保管されていた家具や建具、そしておばあ様が営まれていた時代の什器などの古道具が使われており、そこにドライフラワーや雑貨などがセンス良く飾られています。

元々、お部屋の模様替えが大好きだったそうで、店内のレイアウトや飾りつけも頻繁に変えています。

「自分が居て心地よい空間にしたい。私が一番長い時間を過ごしているので、飽きちゃうんですよね。」と笑うさやかさん。

年に数回、テーマを決めた展示会をしていて、その度に変えているそうなので、いつ訪れても楽しそうな雑貨店です。


「好き」から生まれる出会いをつなぐ場に

小学生の時の未来新聞には「小さなものを扱う”小物屋さん”」を開きたいと書いたさやかさん。大人になってもその夢は変わらず、雑貨店で修業を積み、おばあ様の売店だった場所で、念願の自身のお店を開くことになりました。

置かれているものは全て、さやかさんが使ったり、自身の足で仕入れたり、作家さんとお話をして「良い」と思ったもので、連れ帰ったものをお客様にご紹介する、いわば「さやか’s セレクトショップ」です。思い入れのある作品や商品ばかりなので、お客様にそれらについて聞かれた際は、そのモノの裏にあるエピソードも含めてお伝えし、そのお客様にとって良い出会いになるもの、大切にしてもらえるような橋渡しをしたいと言います。

「作家さんがひとつひとつ大切に作ってくださっているのを知っているから、作家さんの想いは一番わかっていたいし、大切にしたいです。この店に預けてよかった、と思ってもらいたいですし、お客様にも良いものと出会えたと喜んでもらいたいですね。」

帆布かばんを縫う

店主の杉浦さやかさん

帆布かばんを縫う

この器は「掻き落とし」という技法を使ったもの。釉薬を薄く塗った後、茶色い部分を削り出しているのだそう。「ボコボコした手触りなんです。触れて、ひとつひとつ作家さんが削り出している様子に思いを馳せています。」と教えていただいた。私自身は、初見で、上から絵を描いていていると想像したので、削っていたとは驚きでした。聞いて初めてわかることもあり、それは印象深く残るものです。

miccaのロゴ
miccaのロゴ
miccaのロゴ
miccaのロゴ

お伺いした際は、7人の作家さんによる「ねこ展」の直後で、猫ちゃんの作品や、動物をモチーフにした作品が多く展示されていました。作家さんによって表現方法が異なるのも、見ていて楽しい。

miccaのロゴ
miccaのロゴ
miccaのロゴ
miccaのロゴ

触り心地の良いカトラリーや、ガラス小物、クスッと笑ってしまう楽しい文房具や、小さなアクセサリー、身体に優しいお菓子などなど、たくさんの商品があります。

miccaのロゴ
miccaのロゴ

作品のそばにある木端には、作家さんのお名前がスタンプされています。どなたでも読めるように、ひらがな表記。その横にある紙には、作家さんの出身地域や取り扱い方などが書いてあります。
「作家さんの名前を聞くだけだと忘れてしまいがちですが、書いてあればご自身で調べることもできるし、写真を撮ることもできると思って、このようにしています。」とさやかさん。

なお、写真にある商品や作品は随時入れ替えがあります。展示によってがらりと変わりますので、ぜひ、日々さんのインスタグラム(https://www.instagram.com/nichinichi38/ )で最新情報をご確認ください。


保護猫活動と看板猫

日々さんは、雑貨店を営みながら、保護猫活動にも携わられています。お店の商品ラインナップに猫ちゃんをモチーフにしたものが多く見られるところからもわかるのですが、店主のさやかさんは動物の中でも特に猫ちゃんがお好きで、そこから保護猫活動を始められました。

活動内容は、実際にご近所の方から連絡をいただき、捕獲したあと医療ケアを受け、ご実家でお世話をしながら里親を募集し、譲渡する一連を担っておられます。取材時(2023年12月)は4匹の猫ちゃんが里親との出会いを待っている状態。活動を始められてから3年、これまでに20匹のお世話をしてこられました。依頼を受けるきっかけは、捨てられてしまったり、ひとり暮らしの方が亡くなってしまったケースだったりするそうで、子猫は次のおうちが見つかりやすいのですが、大人猫はその速度が遅いそうです。活動はボランティアで、猫がお好きな方からの支援と自己負担で賄っておられて、一番大変なのは病院費とのこと。多い時で月に30万ほどになる時もあるそうです。引き取り手が見つからなかった場合は、ご自身で引き取る覚悟なので、保護頭数はそれができる範囲と決めています。

日々さんの入口横には、現在里親を募集している猫ちゃんの情報が掲示されているので、関心のある方はぜひ問い合わせてみてください!
(取材中も、保護猫ちゃんの情報を聞きにみえるかたがいらっしゃいました)

繭から作られた絹を使ったかばん

入口横には、里親ぼしゅう中の貼り紙。

繭から作られた絹を使ったかばん

レジ前の壁面には猫ちゃんの写真。こちらは、さやかさんがご自宅で飼っておられる「ことら」ちゃん。

取材をしていると、外に気配が。
すうっと現れたのは、地域猫の「ハルちゃん」。ハルちゃんはよくこのお店に現れる猫ちゃんで、店内にも出入りする看板猫。インスタグラム(https://www.instagram.com/nichinichi38/ ) にもよく登場するので、ハルちゃんに会いにくる方がいらっしゃるほどの人気者です。

繭から作られた絹を使ったかばん
繭から作られた絹を使ったかばん

さやかさんに存分に甘えるハルちゃん。とても人懐っこい猫ちゃんです。

繭から作られた絹を使ったかばん
繭から作られた絹を使ったかばん

看板猫の貫禄。日々さんに足を運ぶと、会えるかもしれません。


駅前の街角で、これからも縁を繋いでいく

多くの人々が行き交うJR安城駅北口ですが、お店はかなり少なく、今は素通りする人が多いのが現実。お客様はインスタグラムを見て来られる方が多いそうです。

「このあたりでも人が滞在できるようなお店が増えるといいのですが。」と期待しながら、展示替えをして情報を発信し、オンライン販売も併せてファンを増やしています。

繭から作られた絹を使ったかばん

頻繁に電車と人が行き交う賑やかな外から一歩入った店内は、軽やかな音楽と共に穏やかな時間が流れている。

「お店をやっているといただき物も多いんです。形のあるものからないものまで。"自分は何を返せるだろう” と考えますが、お客様に『出会いをありがとう』『自分で探しても出会えなかったものと出会う機会をありがとう』と言われると、やってよかったなぁと嬉しくなります。」とさやかさん。
 
街の人々が行き交う駅前にそっと佇むお店で、かつてのお祖母様と同じように、さやかさんも雑貨と猫ちゃんを通して新しい縁を繋ぎ広げているのだと感じました。
 
オンラインでいつでもどこでも情報が手に入り、物が買える時代ですが、思いもよらない出会いはこのような場所から生まれます。皆様もぜひお気軽にお立ち寄りください。新しい出会いが待っていると思います。

(文・写真:松尾 絵美子)

 
かばん作家micca
 

緑と雑貨と器のお店
日々(nichi nichi)

 

〒446-0063 愛知県安城市昭和町1-12
TEL 0566-66-5694
Mail nichinichi38@gmail.com 
IG https://www.instagram.com/nichinichi38/

open 11:30~17:00

月曜定休
※展示準備などで臨時休業があります。詳しくはインスタグラムをご覧ください。


《編集後記》

miccaのオーダーメイドバッグ

取材時に靴下とお菓子を購入させていただきました。靴下は厚手で肌触りの良いオーガニックコットンのもので、「冷え防止にいいですよ」とお勧めされてお迎えしましたが、デスクワーク時に足元が暖かく、何より肌触りが良いので幸せな気持ちになります。
 
名古屋市千種区の焼き菓子屋さん「トリドリ」のお菓子は、ナルセコーポレーションのスタッフのお気に入りなのですが、日々さんでも取り扱いがあり、こちらもいただきました!きび砂糖とハチミツの優しい甘さに、シナモン・カルダモン・ジンジャーのスパイスが効いていてとても美味しい。何より、クッキーの顔にほっこり癒されました。
 
日々さんの扱うものは、思わず顔がほころぶ物が多くあるのが印象的でした。

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